はじめに
歯と歯周組織の構造と痛みの原因
一般的な根管治療および根管充填
新しい概念による根管治療
次世代の歯槽骨の再生と回復
おわりに
 新しい概念による根管治療
歯と同じ組成になる安全な材料とは?


Guide Book−Vol.1およびVol.2で述べた※カルシウムフォスフェイトセメントは、良好な生体親和性を有するのみではなく、体液の介在下で歯や骨の硬組織の主成分であるHApに短時間で転化し硬化します。このような特徴を有するリン酸カルシウムを※自己硬化性リン酸カルシウムと言い、CPCはSHCPのオリジナルであり代表的なものです(Fig.12)。さらに、CPCは他の材料に見られるような硬化に伴う収縮や変形もなく、生体内環境下で、その硬化物は溶解しないという特性も有しています。その硬化における反応式は、以下に示す通りです。

Fig.12
カルシウムフォスフェイトセメントCalcium Phosphate Cement-----以下CPC
自己硬化性リン酸カルシウムSelf-hardeningCalcium-----以下SHCP
CPCは歯の構成成分であるHApの結晶を析出しながら硬化するので、根管充填に用いた場合、歯のHAp結晶と結合した状態で硬化し、前述のように収縮する事なく結晶の成長に伴い根管内を緊密に封鎖します。良好な生体親和性と優れた封鎖性により、根管充填材として使用するには最適の材料と言えます。CPCを根管充填に応用するには、細い根管を隙間なくスム−ズに充填するために、CPCと※分散媒としての液とを練和してペ−スト状(粉液比P/L≒2.5)にしておきます。その場合の硬化メカニズムをFig.13に示します。

Fig.13
分散媒としての液Glycerol,Polyethylene glycolなど
根管充填を行なうにあたっては、Fig.14−a,bに示すようにシリンジよりCPCペ
−ストを根管内に充填します。充填装着は簡単であり、短時間で確実に行なえるため処置時間が短いという利点を有します。Fig.14−cには充填後のX線写真を示しました。X線に対する造影性を有するので術後のチェックも容易です。体液(水:H2O)の浸入に伴い分散媒は歯の外へ出て行き自然に吸収されます。生体に対する偽客性は全くありません。このCPCペ−ストとGP・GCあるいはCHIとの根管充填を行った結果について説明します。
Fig.14-a/CPC充填用シリンジ

Fig.14-b/根管充填操作Fig.14-c/根管充填後のX線造影性
まず、Fig.15にCPCによる充填結果を示しました。根管は歯と同じ結晶のHApにより緊密に塞がれており、Poly−Rという粒径2nm程の微少な色素を用いた封鎖性の実験でも、CPCで充填した場合はaに示すように根管とCPCの介面(接合部分)およびCPC内部に対して、色素の浸入は全く見られません。また、bには一般的処置では充填が不可能とされる根尖分岐のある根管をCPCで充填した結果を示しました。CPCはどのような根管形態のものでも、また、根尖開拡のような、いかなる充填材でも緊密な封鎖が行なえなかった症例でも、充分に緊密な封鎖が行なえることが確認されました。

Fig.15-a/CPCによるFig.15-b/根管が分岐していても
 隙間のない封鎖問題なく充填が行なえる
Fig.16にはCPCによる根管充填の模式図を示しました。図に示すように、従来の材料では充填が不可能であった部分にも、CPCでは緊密に充填が行なえます。また、CPCは生体内で短時間で歯と同じ結晶のHApに転化して歯と結合して硬化するので、歯質再生型の根管充填が可能となり、この治療による安全性は極めて高いと言えます。

Fig.16/どのような形状の根管にも隙間なく充填が行なえる。
Fig.17−aにはGPで充填し、さらにGCで根管内壁との介面にできる隙間を塞いだ場合の結果を示しています。根管治療では、この方法が最も確実な充填方法として一般的に行われています。一見良好な根管壁への適合性を示しているようですが、実際には介面に沿
って色素が根管内部へ侵入しているのがわかります。緊密充填と言われている方法でもやはり、細菌が入り込むだけの隙間が存在しています。次にbに示すように、GCのみで充填した場合は、色素が介面に沿って完全に侵入しているのみでなく、充填物内部へも色素が入り込んでいるのが認められます。また、根尖付近には材料の溶解に伴う陥没と、内部には材料の硬化収縮と溶解に起因する空隙の形成が観察されました。硬化するペ−スト型材料でこれ程の隙間が出来るのですから、硬化しないタイプのCHIなどでは溶出による大きな空隙が出現し、さらなる色素侵入が起こることは想像に難くありません。現実にはこのようなペ−ストは固まらないので色素侵入があらゆる部分に起こるため試験をすることができませんでした。すなわち、一般で行なわれている根管充填では、いかなる手段を講じても、細菌等による汚染の可能性が非常に高いことを物語っています。しかし、これが現実に行なわれている根管充填の実態なのです。

Fig.17-a/Fig.17-b/
Fig.18は根管充填後の歯周組織の病理組織反応、すなわち、充填材料に対する生体親和性について示しました。aにはGCで根管充填した症例を示しています。術後2か月経過しても激しい炎症性の反応(IR)が根尖周囲の組織に認められます。bのCHIの症例でもやはり炎症性の反応が起こっています。すなわち、根管を防いで感染を予防するための材料が、発赤、腫脹、発熱、機能障害、疼痛を伴う炎症を引き起こす原因となっていることが示されています。cにはCPCで根管充填を行なった症例を示しています。根管の内部が隙間なく充填されており、意図的に歯の外へ若干押し出されたCPCのペ−スト部分までセメント質によって歯の一部分として(NC)取り囲まれていることがわかります。黒く見えるのはX線造影剤として添加したZrO2(酸化ジルコニウム)で、全く体に影響はありません。2ヶ月経過時の根尖付近の炎症性の反応も全く見られません。

Fig.18-aFig.18-bFig.18-c
CPCを用いた根管充填は、処置も簡便で、どのような根管にも応用可能であり、充填の確認を行なうためX線造影性も充分にあることがわかっています。加えて根管充填後のCPCは、前述のように歯と同じHApの結晶へと転化するので、歯の一部として取り込まれ、それゆえに生体親和性は非常に優れているのです。また、析出した結晶は歯の根管壁と結合し根管内を緊密に封鎖するので、術後の感染も防ぐことが出来るわけです。この材料は充填後1〜2日までは、硬化がゆっくりと進むので、処置上問題が生じた場合には容易に取り除くことも可能なので、その安全性は高く評価されています。Fig.19にはCPCによる根管充填の方法と結果のまとめを示しました。

Fig.19
以上、CPCを用いた根管充填について述べてきましたが、他の対照となった材料(GP、GC、CHIなど)は既に市販され臨床で汎用されています。この点より勘案しても、CP
Cはこれらの材料と比較して、その生体親和性や封鎖性の点より、より良好な臨床結果がもたらされるであろうことが、ご理解頂けたかと思います。
一般的な根管治療および根管充填次世代の歯槽骨の再生と回復