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| ほとんどの歯痛は歯周組織の痛み?! I, 歯の痛みについて |
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| 患者さんの訴えてくる痛みの原因は様々です。歯の痛みは、主に神経と言われる歯髄の炎症および象牙質の露出による※知覚過敏(虫歯、ブラッシング、歯軋り等によるエナメル質の磨耗・崩壊によって生ずる)によって起こります。その他の歯痛と称される痛みは、歯を取り囲む歯周組織(歯槽骨、歯根膜、歯肉など)の痛みであることはあまり知られていません。まず、歯の痛みの原因を語る前に、歯の構造について述べましょう。
成人の歯と周囲組織の構造と機能について、概ねFig.1−a,bに示します。このFi g.で解説されているように、歯は種々の組織が複合的に結合した器官であり、加齢的に成長して行きます。また、歯の構成部位の違いによって原器となる胚(外胚葉、中胚葉、間葉etc.)も異なる為、現在でも歯を直接形成する幹細胞は見つかっておらず、それゆえに再生することも難しい器官なのです。 |
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![]() ■Fig.1-a |
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| ※象牙質知覚過敏症
象牙質が露出すると象牙細管が表面に露出することになります。この管を通して歯髄より体液が滲み出していますが、歯軋りやブラッシングで深く象牙質が削られると、擦過・冷水・酸・甘味などで体液の流れに強い変化が生じます。この流れの変化が歯髄を刺激して疼痛を生じさせることになり、知覚過敏が発症します。 |
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| 歯の構造と機能をご理解いただいたところで、萌出直後と成熟後の歯の模式図を示します(Fig.2)。歯はCa5(PO4)3OH:ハイドロオキシアパタイト(Hydroxya patite:以下HApと称す〉と言われるリン酸カルシウムの結晶を主要構成成分として出来ています。Fig.2−aに示すように、象牙質はその内部に歯髄から生ずる無数の細管(象牙細管:直径1〜5μm)が通り、歯髄から体液が歯の表面に向かって流れ出ています。この体液は象牙質を被覆するエナメル質内部に存在する極く微少な30〜40%程のHApのすきま(間隙)を通り歯の表面に間断なく徐々に浸み出して行きます。この体液の還流により、歯は内部からの栄養の供給を受けると共に、その中に含まれるカルシウム(Ca2+)とリン(P3-)の歯質HApへの沈着と補強により、歯は年齢と共に密度を増し成熟して行きます(Fig.2−b)。また、歯は内部の間隙を還流する体液の存在により比熱が大きくなり、温度差の大きな飲食物と接しても、歯髄はほとんど痛みを感ずることなく過ごすことができます。さらに、何らかの衝撃によって歯に亀裂が生じたり、歯の表面が溶かされても、体液中に過飽和となって溶け込んでいるCa2+とP3-がHAp結晶として析出し成長することによって、歯を修復させます。この他に、歯根は加齢にともない長くなり歯髄腔は狭窄し、HAp結晶のさらなる沈着と成長により歯は密度を増して成熟して行きます(Fig.2−b)。 |
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![]() ■Fig.2 |
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| では、歯の痛みはどのようなメカニズムにより起こるのでしょうか。歯の内部を体液が還流していることは既に述べた通りですが、Fig.3に示すように、象牙質の露出部には歯髄と直結する象牙細管が開口しているので、この部分に冷たいものや甘いものが触ると、温度差や浸透圧の影響で体液の流れに変化が生じます。実は、この体液の流れの変化によって痛みが生ずるのです。この程度の状態であれば、歯髄は正常なので、充填などの治療で痛みは収まります。 | ||
![]() ■Fig.3 |
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| 次に虫歯や象牙質の崩壊が著しく進み、歯髄炎を起こした場合について述べます。Fig. 4に図説するように、歯髄はその周りを象牙質と言われる硬組織で囲まれており腫れる事が出来ないため、一旦炎症を起こすと内圧が高くなり、時として激烈な痛みが生じます。それゆえに、炎症を起こした歯髄は、一般的には取り除く処置を行なう事になります。 さて、炎症や感染によって再生の難しくなった歯髄を取り除く処置を抜髄と言います。また取り除いた後の歯髄腔(歯髄の入っていた管腔)を洗浄してきれいにする処置を根管治療、その後の根管を塞ぐ処置を根管充填と言います。以上の処置が充分になされず歯髄の取り残しがあったり、塞いだ充填材が歯の外に出てしまったりすると、今度は歯周組織に炎症が生じてきます。 |
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![]() ■Fig.4 |
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| II, 歯周組織の痛みについて
この項では歯周組織の痛みと原因について述べます。感染した根管(感染根管)が原因となる歯周炎は、歯根の先端付近に生じて来るので根尖性歯周炎と言います。症状としてはFi g.5−aに示されるように、根尖付近に感染物質が滞留することによって炎症が起こり、※膿瘍の形成と骨の吸収が起こります。膿瘍部分ではマクロファ−ジと言われる大型の巨細胞により膿瘍内の壊死物質などが貪喰・吸収されて行き、徐々に脂肪状の細胞に置き換えられて行きます。膿瘍の周辺では骨の吸収が起こって来ます。その後膿瘍は、肉芽腫に転化するか、線維性の組織で囲まれる嚢胞に移行して行きます。これらは将来的に、さらに周囲の骨を侵蝕し、多くの場合歯肉直下まで排膿路を延長して行き、ついには瘻孔と言われる排膿路が歯肉表面に開口する事になります(Fig.5−b)。このような状態になると、炎症や腐敗ガスの膨張により内圧が高くなり持続性の痛みが生じて来ます。また、歯は周囲組織の内圧が高くなり押し上げられて浮き上がります。加えて、周囲の骨の吸収も起こっているので、満足に噛む事が出来なくなります(Fig.5−c)。特に、体調が悪く歯周組織が鬱血状態になったり、カゼや疲労で体温が上がったり、風呂やふとんに入って温まったりすると、当然の事ながら炎症が激しくなるので、腫れや痛みは一層ひどくなります。このような痛みは、歯ではなくその周囲組織に起こる痛みなので、相対する歯との咬合や温熱的な刺激によって特に大きくなります。膿瘍を形成する根尖性炎(歯根肉芽腫・歯根嚢胞も含む)は自然治癒することはほとんどありません。 |
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![]() ■Fig.5 ※膿瘍 主に白血球や異物を貪喰・吸収するマクロファ−ジなどの壊死組織より形成されています。 | ||
| 歯周炎には、根尖性の他に長期に亘る歯周炎などによって生ずる辺縁性歯周炎もあります。さらに過剰な咬合圧によって垂直方向に骨が※吸収する外性咬合に起因する歯周炎もあります(Fig.6)。 | ||
![]() ■Fig.6 |
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| ※骨の吸収と再生について
成人の骨は、おおよそ半年から1年程の周期で改造され新しくなって行きます。すなわち、古くなった骨には骨を吸収する破骨細胞(Osteoclast)が生じて比較的短期間(2〜3週間位)で一定の範囲の骨を溶かします。一方、それまで骨の存y´?在していない部分や吸収された所には骨を造る骨芽細胞(Osteoblast)が生じて、新しい骨の形成を行ない始めます。このようにして、骨の吸収と形成は一定の周期で繰り返されています。但し、一度骨が失われると、破骨細胞や骨芽細胞が出現する骨という基盤がなくなるので、骨の再生は不可能となってしまいます。また、骨の生理的負担の限界を超えた過剰な圧が加わると、破骨細胞のみならず炎症性細胞による骨吸収が急激に進み、結果として、骨は再生不能となります。 |
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| 一般的に言われる歯槽膿漏とは、辺縁性歯周炎の事を言いますが、この状態になると歯を取り囲む骨が極端に減少するため、さらなる過剰な咬合圧が限定された骨に加わり一挙に骨の吸収が起こります。以上の結果として、多数の歯を同時に失う事になる場合があります(F ig.7)。この項で述べた痛みとは、歯周組織に起因する痛みであり、歯の痛みではありません。 |
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![]() ■Fig.7 |
| はじめに |
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