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| I, 抜歯後に起こる周囲組織の変化について | |||
![]() ■Fig.1-a/抜歯前 |
歯を失った骨(歯槽骨)とそれに近接する組織にはどのような変化と障害が生じるのか、一般にあまり知られていないようです。以下、抜歯後に起こるこれら周囲組織の変化について述べます。
歯を何らかの原因によって抜歯したとします。それによってどのような変化が起こってくるのかを示したのがFig.1です。 |
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![]() ■Fig.1-b/抜歯直後 |
まず抜歯が行われた部位には大きな骨の空洞が残ります(Fig.1−a,b)。この空洞は生体の治癒機転により修復されるわけですが、その治り方は次の通りです。まず抜歯した穴(抜歯窩)に血餅が形成され内部に血管の新生と共に骨を造る細胞(骨芽細胞)の増殖が始まります(Fig.1−b)。 | ||
![]() ■Fig.1-c/治癒途中過程 |
そして、徐々に血餅は新生血管と骨芽細胞を主とする組織(肉芽組織)に置き換えられ、時間の経過と共に線維化していくことになります(Fig.1−c)。 | ||
![]() ■Fig.1-d/一時治癒終了後 |
そして線維性の結合組織は、しだいに線維性骨といわれる幼若な骨に置き換えられて行き、ついには骨の改造が行なわれる基本的な骨の単位である層板状の骨に転化して治癒に至るわけです(Fig.1−d)。ここまで約半年はかかります。しかしここで述べる治癒とは歯を囲む歯槽骨についてのみ言えることであり、骨の表層部が緻密骨で覆われるまでには、抜歯後1年程の経過が必要になってきます。
さて、問題なのはここから後のことなのです。骨は基本単位であるオステオンといわれる層板状の骨によって形成されています(Fig.1−e)。 |
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![]() ■Fig.2 |
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| しかし、歯を失ってしまうことにより、歯からの咬み合わせ等による何らの刺激を受けない骨は、その後変化を起こし始めます(Fig.2)。Fig.2−aが正常な状態を示しbは下顎第一大臼歯の抜歯後の変化を示しています。
まず何らの機能も行われない歯槽骨は、その歯槽骨の巾と高さを徐々に減らして行きます。また折角出来上がった骨もその内部において吸収が起こり、骨の空洞化が増して行きます。また、抜歯部位と咬み合う(対合)関係にあった歯は20〜40kg程の力で、多い時には数千回咬み合っていた相手方の歯(対合歯)が失われることにより、その反作用として主に歯と骨の間の歯根膜に分布する血圧等の影響によって徐々に飛び出して(挺出)行きます。この挺出は、当然骨も伴って起こるものなので、将来的に歯のみならず他の部分でも大きな問題を呈することになって行きます。抜歯の行われた部位に隣接する歯はというと、徐々に抜かれた部位に対して倒れ込み、移動してきます(Fig.2−b)。 |
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![]() ■Fig.3 |
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| その結果として、対合歯との正常な咬み合わせの関係がくずれ、結局は顎関節における関節頭と関節窩の正常な関係ではなくなり、関節障害(顎関節症)を引き起こすこととなります(Fig.3)。
下顎の臼歯を抜歯した場合には、(Fig.2−b,Fig.3)に示されるように下顎骨の中を神経や血管を内蔵した下顎管が通っています。この神経や血管の通路である下顎管は歯からの咀嚼等による圧を受けないと徐々に下顎骨の中を上昇していき、また骨は抜歯後そのまま放置すると徐々に吸収されて顎の歯ぐき自体が下がって行くので、ついには長時間そのままの状態だと歯肉の直下に下顎管(下顎骨の神経と血管が通っている管)が出てくることになり、とても入れ歯(義歯)などを入れる状態ではなくなります。また骨には顎や口を動かす筋肉が直接付着していますので、これらを動かし力を入れる度に、歯槽堤(歯ぐきおよびそれを支える直下の骨)にはいくつもの筋肉の筋が立つことになります。咬み合わすことなく静かな状態だと入れ歯は合うが、咬もうとすると特定の部位が擦れて痛いという状態になるのは、主に以上のような原因によって起こります。 |
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![]() ■Fig.4/歯の喪失に伴う歯槽骨および上顎洞の変化 |
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| さらに、上顎臼歯を抜歯した場合には、Fig.3,4に示されるように歯槽骨の吸収、空洞化と共に、俗に蓄膿症が発症する空洞として知られる上顎洞(副鼻腔)がどんどん拡大して下がってきて、骨が一層残っているだけでその直下は大きな空洞という状況が起こってきます。歯槽堤の減少のみではなく更にこのような状態になるわけなので、当然のことながら下顎と同様に当然義歯の安定など望めません。上顎も下顎も抜歯後に起こってくる状況を真剣に考えると、対症的なその場を一時的にしのぐ療法ではなく、根本的に骨の吸収を防ぐ何らかの方法が絶対的に必要であると思われます。 | ||
![]() ■Fig.5-a/正常 |
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![]() ■Fig.5-b/抜歯後 |
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Fig.5−aには正常な歯列を有する場合の全顎X線写真のトレ−スを、bには、抜歯した後、長期間そのままの状態にしていた場合の全顎X線写真のトレ−スをイラストにしたものを示しました。aとb共に実際のX線写真からトレ−スをして作製ものです。bのイラストをaと比較すると、骨の吸収、骨の変形、下顎管の移動、上顎洞の拡大、顎関節部の変化等がはっきりと見られます。すなわち、歯を抜くということは結果的に骨を失うことになっていくということがおわかり頂けると思います。また、下顎管の移動、上顎洞の拡大、顎関節の変化等の種々の問題も同時に起こり始める事も、ご理解頂けると思います。 では、一体どのようにして失われた骨(歯槽堤)の再生を行なう事ができるのでしょう。Fig.5−bのような状態の症例では、いくらインプラント(人工歯根)処置を希望しても行なうことは出来ません。それはインプラントを植立すべき歯槽骨が、その厚さも高さもなく、かつ骨の内部には多くの空隙を有するという問題があるからです。また、前述のように下顎管や上顎洞まで数mmの厚さの骨すらないためです。このような状態になるとインプラントを埋入することはおろか、入れ歯も安定せず動き廻る状況になるので、患者さんは非常に不快な状態で食事や会話をせざるを得ないこととなります。患者さんはこの状態から、その後決して解放されることなく、骨の吸収と共に、さらに悪い状態へと移行、進行していくことになります。 |
| はじめに |
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